雇用

視覚障害のある方の雇用ガイド|職域・支援機器・合理的配慮の実務

視覚障害のある方の採用・就労を企業目線で解説。活躍している職域、スクリーンリーダーなどの支援機器、職場の合理的配慮の具体例、使える助成金までをまとめた実務ガイドです。

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視覚障害のある方の雇用は、スクリーンリーダー等の支援機器とICT環境の整備によって、事務・IT・専門職まで職域が大きく広がります。

この記事のポイント

  • 「視覚障害=全盲」ではない。見え方は多様で、必要な配慮も一人ひとり異なる
  • 支援機器(スクリーンリーダー・拡大ソフト等)の整備で、PC業務の多くは遂行可能
  • 業務システムが音声読み上げに対応しているかが、任せられる業務の範囲を左右する
  • 機器の導入や環境整備には助成金・貸出制度が使える

視覚障害と就労の基礎 — 見え方は多様

視覚障害には、全く見えない「全盲」だけでなく、視力が低い・視野が狭い・まぶしさに弱いなどの「ロービジョン(弱視)」が含まれ、実際にはロービジョンの方が多数を占めるとされています。同じ等級でも見え方や得意な情報の取り方(音声中心・拡大表示中心・点字など)は人によって異なるため、「何がどう見えにくく、どんな方法なら業務情報にアクセスできるか」を本人と確認することが配慮の出発点です。

活躍している主な職域

視覚障害のある方が活躍している職域の例
職域 業務内容の例 ポイント
事務職 データ入力・文書作成・経理補助・電話応対 スクリーンリーダー対応のシステム環境が前提
ITエンジニア プログラミング・テスト・アクセシビリティ検証 開発環境の多くは音声読み上げで操作可能。当事者視点の検証は強みになる
ヘルスキーパー(企業内理療師) あん摩マッサージ指圧師等の資格を活かした社員の健康ケア 従来からの専門職域。健康経営施策としても位置づけられる
カスタマーサポート 電話・チャット対応、テレワークでの受付業務 音声コミュニケーションが中心の業務と相性がよい
人事・教育・広報 研修講師、採用、社内のアクセシビリティ推進 経験を活かしD&I推進の中核を担う例が増えている

「視覚障害だからこの仕事」と決めつけず、本人のスキルと支援機器の組み合わせで考えることが職域を広げます。業務の組み立て方は業務切り出しガイドも参考になります。

支援機器・ソフトウェア

就労で使われる主な支援機器・ソフトウェア
種類 役割
スクリーンリーダー PC-Talker、JAWS、NVDA、VoiceOver(Mac/iPhone標準)、ナレーター(Windows標準) 画面の文字情報を音声で読み上げる。PC業務の基盤。詳細はスクリーンリーダー職場導入ガイド
画面拡大ソフト ZoomText、Windows標準の拡大鏡 ロービジョンの方の画面利用を支援。色反転・カーソル強調も
点字ディスプレイ 各社ピンディスプレイ 画面情報を点字で出力。正確な文字確認や静かな環境での作業に
OCR・AI系ツール 音声読書器、スマホのOCRアプリ、画像説明AI 紙資料や画像の内容をテキスト化・音声化する

機器のカテゴリ全体像と個人向けの給付制度は支援機器・用具ガイドで詳しく解説しています。重要なのは機器そのものより、社内の業務システムやファイルが「読み上げ可能」であることです。画像化されたPDFやスクリーンリーダーで操作できない社内システムは、それだけで業務範囲を狭めます。自社サイトやWebシステムの状態はWebアクセシビリティ診断(無料)で確認できます。

職場の合理的配慮の具体例

  • 情報アクセス — 資料はテキストデータで共有(画像PDF・FAXを避ける)、会議資料の事前送付、ホワイトボードの内容は口頭でも説明
  • 業務環境 — スクリーンリーダー・拡大ソフトの導入許可と費用負担、照明・座席位置の調整(まぶしさ・見えやすさへの配慮)
  • 移動・通勤 — 通勤ラッシュを避ける時差出勤、社内レイアウト変更時の事前案内、通路に物を置かない運用
  • コミュニケーション — 声をかけるときは名乗る、「あれ・これ・そこ」ではなく具体的に伝える、緊急時の避難支援体制を決めておく
  • 教育・評価 — 研修資料のアクセシブル化、eラーニングの読み上げ対応確認、成果は業務遂行の結果で公平に評価

内閣府の「合理的配慮等具体例データ集」には視覚障害の事例が多数掲載されており、自社の状況に近い例を探せます。

採用選考での配慮

募集・選考の基本は障害者採用の実務ガイドのとおりですが、視覚障害のある方の選考では次の点も確認・調整します。

  1. 応募書類・適性検査の形式(テキストデータ提出・読み上げ対応・時間延長の可否)
  2. 面接会場までの移動(駅からの誘導、オンライン面接への切り替え)
  3. 面接での確認事項(見え方、情報の取り方、使い慣れた支援ツール、通勤経路の安全性)

使える支援制度・助成金

  • 就労支援機器の貸出(JEED) — 高齢・障害・求職者雇用支援機構が、スクリーンリーダー等の就労支援機器を一定期間無料で貸し出す制度。導入前のお試しに有効
  • 障害者作業施設設置等助成金 — 支援機器・設備の設置費用の一部を助成(納付金制度にもとづく助成金)
  • 職場介助者の助成 — 事務的業務での代読・代筆など、職場介助者の配置費用の一部を助成
  • ジョブコーチ支援・職場適応援助 — 地域障害者職業センター等による職場定着の専門支援

いずれも要件・申請期限があるため、採用計画の段階でハローワーク・JEEDに確認しておくとスムーズです。

定着のポイント

入社後は、①業務指示をテキストで残す文化、②システム更新時の読み上げ互換の確認、③定期面談での配慮の見直し、の3点が定着を支えます。配属先への事前説明は受け入れ準備ガイドの手順が使えます。中途で視覚障害を受障した社員の雇用継続(職場復帰)でも、本記事の支援機器・助成金は同様に活用できます。

受け入れ前チェックリスト

  • 本人が使うスクリーンリーダー・拡大ソフトで、業務システムと主要ファイルが実際に操作・閲覧できるか検証したか
  • 社内資料を「テキストデータで作成・共有する」運用ルールを配属先に周知したか
  • 執務スペースから会議室・トイレ・避難口までの動線を本人と一緒に確認したか(通路に物を置かない運用も)
  • 火災・地震時の避難支援担当を決め、訓練に組み込んだか
  • 研修・eラーニング教材が読み上げに対応しているか確認したか
  • 助成金・機器貸出の申請スケジュールを入社日から逆算したか

社内の理解づくり — 「特別なこと」にしない

配属先には、視覚障害の一般論より「この方はこういう方法で仕事をする」という具体的な情報のほうが役立ちます。本人の了解を得たうえで、情報の取り方(音声・拡大)、声のかけ方、依頼時のルール(テキストで渡す)を共有しましょう。最初の1〜2週間は質問窓口となる担当者を決めておくと、本人も周囲も戸惑いが減ります。過剰に構える必要はなく、「伝え方を少し具体的にする」だけで解決することが大半です。

よくある質問

視覚障害のある方にPC業務は任せられますか?
スクリーンリーダー等の環境が整えば、データ入力・文書作成・プログラミングなど多くのPC業務が遂行可能です。鍵になるのは本人のスキルと、社内システムの読み上げ対応です。
支援機器の費用はどのくらいかかりますか?
無料のもの(NVDA、OS標準機能)から数十万円の専用機器まで幅があります。JEEDの無料貸出で試してから、助成金を使って導入する流れが低リスクです。
社内システムが読み上げに対応しているか分かりません。
実際にスクリーンリーダーで操作して確認するのが確実です。JEEDの貸出制度や支援機関の協力で入社前に検証できます。Webシステムならアクセシビリティ診断で基本的な問題を確認できます。
通勤に不安があります。在宅勤務でもよいですか?
在宅勤務でも常用雇用であれば雇用率に算定されます。通勤の安全確保が難しい場合の有力な選択肢です。制度設計は在宅・テレワーク雇用ガイドをご覧ください。
全盲の方とロービジョンの方で配慮は変わりますか?
変わります。全盲の方は音声・点字による情報保障が中心、ロービジョンの方は拡大表示・照明・コントラストの調整が中心になることが多いですが、いずれも本人との確認が前提です。
点字の環境を用意する必要がありますか?
必須ではありません。点字を日常的に使う方は視覚障害のある方の一部で、実務では音声(スクリーンリーダー)や拡大表示を使う方が多数派です。本人の情報の取り方に合わせて用意します。
面接で「どこまで見えるか」を聞いてもよいですか?
業務遂行と配慮の確認に必要な範囲で、「業務ではどのような方法で画面や資料を確認されますか」のように具体的な場面で聞くのが適切です。医学的な詮索は避けます。

本記事は一般的な実務情報です。配慮の内容は一人ひとり異なるため、必ずご本人と相談のうえ決定してください。出典: 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「視覚障害者の職場定着推進マニュアル」「就労支援機器のページ」、内閣府「合理的配慮等具体例データ集」。最終更新: 2026年7月。