在宅雇用とは、テレワークを前提に業務を設計し、通勤の負担なく障害のある方が働ける形を整える方法です。法定雇用率2.7%時代(2026年7月施行済み)の職域確保策として、また通勤が障壁になっていた方の戦力化策として、選択肢の重要度が上がっています。
- 在宅勤務でも、常用雇用なら雇用率の算定方法は通常どおり(週30h=1人・週20〜30h=0.5人)
- 通勤という障壁を環境側から取り除く、社会モデルに沿った選択肢
- 労務の要点は「労働時間の把握」「費用負担の取り決め」「情報の取り扱い」「テレワーク規程」
- 定着の鍵は孤立を防ぐコミュニケーション設計とオンボーディング
- 雇用のほかに「在宅就業障害者支援制度」(発注型)という選択肢もある
なぜ在宅の障害者雇用が広がっているのか
テレワークの一般化により、通勤が身体的・精神的な負担になっていた方も働きやすくなりました。企業側にも、①オフィスの座席や通勤圏の制約を超えて全国から人材を迎えられる、②2.7%への引き上げで増えた必要数に対して職域の選択肢が広がる、③災害時等の事業継続にも資する、という利点があります。都市部の求人競争が激しい今、地方在住の人材に届く在宅雇用は、採用戦略としても合理的です。
雇用率算定との関係(よくある疑問に先に回答)
「在宅勤務だと雇用率に入らないのでは」という誤解がありますが、雇用契約に基づく常用雇用であれば、勤務場所が自宅でも算定は通常どおりです。週30時間以上は1人、週20〜30時間未満は0.5人としてカウントされます。フルタイムが難しい方を短時間の在宅勤務で迎える設計も可能です(カウント方法の詳細)。
在宅に向いている業務(具体例)
| 系統 | 業務の例 |
|---|---|
| 事務・データ系 | データ入力・集計、経費チェック、名刺・顧客リストの整備、書類の電子化後の点検 |
| テキスト系 | 音声の文字起こし、議事録作成、文書の校正、FAQの整備 |
| Web・デジタル系 | Webサイトの更新、画像加工・タグ付け、ECの商品登録、SNS投稿の下準備 |
| チェック系 | Webページやアプリの動作確認、アクセシビリティの一次チェック、リンク切れ確認 |
共通するのは「成果物で進捗を確認しやすい」こと。業務の切り出しとデジタル化を組み合わせると、在宅で任せられる職域はさらに広がります。
制度設計(労務管理の4点セット)
- 労働時間の把握 — 始業・終業の記録方法(勤怠システム・チャット報告など)を決めます。厚生労働省の労働時間把握ガイドラインに沿った管理が基本です。中抜け(通院・休憩)の扱いも先に決めておくと、体調に合わせた働き方がしやすくなります。
- 費用負担の取り決め — PC等の機器は会社貸与が基本。通信費・光熱費の負担(手当・実費・按分)をテレワーク規程で明確にします。
- 情報セキュリティ — 扱える情報の範囲、画面・書類の管理、家族との共用PCの禁止など、ルールを文書化して共有します。
- 就業規則・テレワーク規程 — 対象者・頻度・費用・安全衛生を規程化します。なお、在宅勤務中でも業務に起因するけがは労災の対象になり得ます(個別の判断は労働基準監督署へ)。
孤立を防ぐコミュニケーション設計
在宅雇用のつまずきで最も多いのが、孤立と相談のしづらさです。
- 定例の接点 — 朝会(5〜10分)や週次1on1など、「話す機会」を仕組みで確保する
- 気軽に聞ける経路 — チャットで質問してよい相手と時間帯を明示する(「誰に聞けばいいか分からない」を防ぐ)
- テキスト+口頭の併用 — 指示は文書で残し、ニュアンスは口頭・ビデオで補う
- 不調サインの把握 — カメラオフが増える、返信が極端に遅くなる等はオンライン特有のサインです(テレワークでの気づき方)
オンボーディング(最初の1〜3ヶ月)
- 機器・アカウント・手順書を初日までに整える(初日に「つながらない」を作らない)
- 質問してよい担当者(メンター)を決めて紹介する
- 最初は確実にこなせる業務量で成功体験をつくる
- 週次で「業務量・分かりにくさ・体調」を確認し、段階的に広げる
- 可能なら初期だけ出社日やオンライン顔合わせを設定し、関係の土台をつくる
「雇用」以外の選択肢:在宅就業障害者支援制度
直接雇用のほかに、在宅就業支援団体を通じて在宅で働く障害のある方へ業務を発注する方法があります。この場合、雇用ではありませんが、発注額に応じて障害者雇用納付金制度の特例調整金・特例報奨金の対象になり得ます。「今すぐ雇用は難しいが仕事の発注ならできる」という企業の入り口として知っておくと役立ちます(要件・金額は最新資料をご確認ください)。
支援サービスを使う場合の確認ポイント
在宅の障害者雇用を支援するサービスは複数あり、費用や支援範囲はさまざまです。一社に絞る前に確認したい点:
- 月額費用に含まれる支援の範囲(業務切り出し・研修・定着支援まで含むか)
- 体調・勤怠を把握する仕組みの有無と、本人のプライバシーへの配慮
- 定着実績の数字の前提(期間・母数)
- 自社の業務での実習・トライアルが可能か
当サイトでは支援会社を当事者参画などの観点で中立に比較できます。公的資料では、JEEDの「在宅勤務障害者雇用管理マニュアル」や厚生労働省のテレワーク事例集が実務の参考になります。
よくあるつまずきと対策
- 仕事が枯渇する — 単一業務に依存せず複数業務を組み合わせ、依頼窓口を一本化して補充が続く仕組みに
- 評価が見えない — 成果物と行動の両面で評価基準を事前に共有し、フィードバックを定例化する
- 「見えないから不安」で管理過剰に — 常時監視は信頼と体調の両方に逆効果。成果と定例接点で把握する設計に
よくある質問
- 在宅勤務でも法定雇用率に算入できますか?
- できます。常用雇用であれば勤務場所を問わず、週30時間以上は1人、週20〜30時間未満は0.5人として算定されます。
- 在宅勤務中のけがは労災になりますか?
- 業務に起因するものであれば在宅勤務中でも労災の対象になり得ます。個別の判断は労働基準監督署にご確認ください。
- 通信費や機器の費用は誰が負担しますか?
- 法令で一律には決まっていません。機器は会社貸与が基本で、通信費等は手当・実費などの方法をテレワーク規程で定めておきます。
- フルリモートで地方在住の方を採用できますか?
- 可能です。通勤圏の制約がなくなるため、採用母集団を全国に広げられるのが在宅雇用の大きな利点です。
- 体調管理はどうすればよいですか?
- 本人の同意を前提に、朝の体調共有や定期面談など無理のない方法で把握します。監視ではなく「相談しやすさ」を設計するのがポイントです。
- サテライトオフィス型との違いは何ですか?
- 在宅勤務は自宅で働く形、サテライトオフィス型は支援スタッフのいる共用拠点に通う形です。自宅の環境が整えにくい方や対面の支援が合う方はサテライト型、通勤自体が難しい方は在宅、と本人の状況に合わせて選びます。
- 在宅で任せる業務が思いつきません。
- 業務の棚卸しと切り出しから始めます。成果物で確認しやすい定型業務が第一候補です。支援機関やサービスに業務設計から相談する方法もあります。
出典: 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「在宅勤務障害者雇用管理マニュアル」、厚生労働省の障害者テレワーク事例集・労働時間把握ガイドライン、在宅就業障害者支援制度の公表資料(最新版)。本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言に代わるものではありません。
