組織変革

D&Iとは?意味・DE&Iとの違い・企業の進め方をやさしく解説

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の意味を、企業の実務目線で解説。DE&Iとの違い、2026年の法改正との関係、推進5ステップ、障害者雇用から始める実践までをまとめました。

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D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)とは、多様な人材の違いを認め合い、誰もが能力を発揮できる状態を組織につくる経営の考え方です。

この記事のポイント

  • D&Iは「多様性(Diversity)」と「包摂(Inclusion)」の2語で、「いること」と「活きていること」を区別する概念
  • 近年は公平性(Equity)を加えたDE&Iへ発展している
  • 2026年は法定雇用率2.7%施行・カスハラ対策義務化など、D&Iに関わる法改正が集中する年
  • 推進は「現状把握→方針→制度→風土→開示」の5ステップ。障害者雇用は最初の実践テーマに適している

D&Iとは何か(定義)

D&Iは、Diversity(ダイバーシティ=多様性)とInclusion(インクルージョン=包摂)を組み合わせた言葉です。2つは似ているようで、指しているものが違います。

ダイバーシティは「組織に多様な人がいる」という状態です。性別・年齢・国籍・障害の有無・性的指向・宗教といった属性の多様性(表層的ダイバーシティ)と、価値観・経験・働き方といった内面の多様性(深層的ダイバーシティ)があります。

インクルージョンは「その多様な人たちが、排除されずに参加でき、能力を発揮できている」という状態です。多様な人を採用しても、意見が聞かれず、活躍の機会がなければインクルージョンは実現していません。

よく使われる例えに「ダイバーシティはパーティーに招かれること、インクルージョンはダンスに誘われること」という表現があります。「いる」だけでなく「活きている」ことまでを目指すのがD&Iです。

ダイバーシティとインクルージョンの違い(早見表)

ダイバーシティとインクルージョンの比較
観点 ダイバーシティ インクルージョン
問い 多様な人が「いるか」 多様な人が「活きているか」
測り方の例 女性管理職比率、障害者雇用率、外国籍社員数 定着率、従業員サーベイの発言しやすさ、登用の公平さ
施策の例 多様な採用チャネル、雇用枠の設定 合理的配慮、評価制度の見直し、心理的安全性づくり
失敗パターン 採用したが定着しない 属性を問わず同質の働き方を強いる

DE&Iとは — D&Iとの違い(DEIBへの発展)

近年は、D&IにEquity(エクイティ=公平性)を加えたDE&Iという表現が主流になりつつあります。Equality(平等)が「全員に同じものを配る」考え方であるのに対し、Equity(公平)は「スタートラインの違いに応じて、必要な支援を配る」考え方です。たとえば視覚障害のある社員へのスクリーンリーダー提供は、特別扱いではなく、同じ土俵で力を発揮するための公平性の確保です。

さらにBelonging(帰属意識)を加えたDEIBという枠組みもあります。呼び方は進化していますが、核にあるのは一貫して「多様な人が公平な条件で参加し、能力を発揮し、居場所があると感じられる組織」です。

なぜいま企業にD&Iが必要か

1. 法改正への対応が集中している

2026年は、障害者法定雇用率の2.7%への引き上げ(2026年7月1日施行済み・対象は常用37.5人以上)、カスタマーハラスメント対策の義務化(2026年10月1日施行)など、D&Iに関わる法改正が集中しています。詳しくは法定雇用率2.7%対応ガイドカスハラ対策義務化の解説をご覧ください。

2. 人的資本開示で「見られる」ようになった

上場企業では有価証券報告書での人的資本開示が拡充され、女性管理職比率などの多様性指標が投資家に読まれる時代になりました。D&Iは社内施策であると同時に、開示項目でもあります。人的資本開示とD&I実務ガイドで詳しく解説しています。

3. 人材獲得・イノベーションの土台になる

労働力人口が減るなかで、特定の属性だけを前提にした職場設計は採用力を落とします。また、同質性の高い組織は意思決定が速い一方で、見落としも同質になりがちです。多様な視点は、商品・サービスが多様な顧客に届くかを検証する力にもなります。

D&I推進の進め方(5ステップ)

  1. 現状を把握する — 属性データ(雇用率・比率)と実感データ(サーベイ)の両方を見る。「いるか」と「活きているか」を分けて測るのがポイントです。
  2. 方針を言語化する — 経営としてなぜやるのかを、自社の事業と結びつけて宣言する。借り物の言葉より、自社の顧客・事業に引きつけた理由が推進力になります。
  3. 制度を整える — 合理的配慮の相談窓口、柔軟な勤務制度、公平な評価基準。制度は「例外対応」を「仕組み」に変える装置です。
  4. 風土をつくる — 管理職研修、当事者の声を聞く場、心理的安全性の確保。制度があっても使えない空気があれば機能しません。
  5. 測って開示する — 指標の推移を追い、社内外に開示する。うまくいっていない数字も課題と計画をセットで示すほうが信頼されます。

障害者雇用から始めるD&I

D&Iのテーマは幅広く、どこから手をつけるか迷いがちです。実務の観点では、障害者雇用は最初の実践テーマに適しています。理由は3つあります。

  • 法的な基準がある — 法定雇用率という明確な目標があり、経営の合意を得やすい
  • 仕組みが揃っている — ハローワーク・支援機関・助成金など、外部の支援インフラが整備されている
  • 職場改善が全員に波及する — 業務の切り出しや手順の見える化、コミュニケーションの明確化は、障害のない社員の働きやすさも高める

進め方の全体像は障害者雇用の進め方 完全ガイドに、Webサイトのアクセシビリティ対応はWebアクセシビリティ対応ガイドにまとめています。

よくある誤解

D&Iについてのよくある誤解と実際
誤解 実際
D&Iは大企業がやるもの 法定雇用率は常用37.5人以上の企業に適用されます。中小企業こそ一人の活躍が組織に与える影響が大きく、取り組みの効果が見えやすい面があります。
コストがかかるだけ 助成金・支援制度が使えるほか、定着率の改善は採用コストの削減に直結します。
特別扱いになって不公平 公平性(Equity)は「同じ土俵に立つための調整」です。眼鏡やエレベーターと同じで、特定の人だけの優遇ではありません。
担当部署に任せれば進む 現場の管理職の理解がないと制度は使われません。推進部署と現場の両輪が必要です。

推進でつまずきやすいポイントと対処

推進部署の孤立 — D&I推進室をつくったものの、現場から「本業の邪魔」と見られてしまうパターンです。対処は、現場の困りごと(人手不足・採用難・離職)の解決策としてD&Iを語ること。「理念のため」より「現場のため」が協力を引き出します。

数値目標の独り歩き — 比率や雇用率の達成だけが目的化すると、採用された側も職場も不幸になります。数値(ダイバーシティ)とセットで、定着率や働きやすさ(インクルージョン)の指標を必ず並べて追うことが歯止めになります。

担当者の交代で失速 — 属人的な推進は担当者の異動で止まります。方針の文書化、経営会議での定例報告、外部への開示など、「個人の熱意」を「組織の仕組み」に変換しておくことが継続の条件です。

よくある質問

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは何ですか?
本人が自覚しないまま持っている思い込みのことです。「この業務は障害のある方には無理だろう」といった決めつけが典型で、機会の提供を無意識に狭めます。研修で「誰にでもある」と知ることと、判断を属性でなく事実(スキル・実績)で行う仕組みづくりが対処になります。
D&IとSDGsの関係は?
SDGs(持続可能な開発目標)の目標5「ジェンダー平等」、目標8「働きがい」、目標10「人や国の不平等をなくそう」などがD&Iと直接重なります。D&Iの取り組みはSDGs経営の一部として説明できます。
ダイバーシティ経営とD&Iは同じ意味ですか?
ほぼ同じ文脈で使われますが、ダイバーシティ経営は「多様性を経営成果につなげる」という経営戦略の側面を強調した表現です。経済産業省が推進する考え方として知られています。
まず何から始めればよいですか?
現状把握が出発点です。自社の雇用率・比率などの数字と、従業員の実感(働きやすさ・発言のしやすさ)を確認し、ギャップの大きいところから着手します。障害者雇用が未達の場合は、そこが法的にも優先度の高いテーマです。
小さな会社でもD&Iはできますか?
できます。制度を大きく変えなくても、業務手順の見える化、面談での配慮の確認、採用チャネルの見直しなど、小さく始められる施策から効果が出ます。
D&Iの効果はどう測ればよいですか?
属性データ(雇用率・管理職比率・定着率)と意識データ(従業員サーベイ)を組み合わせます。単年の数字より推移を見ることが重要です。
インクルージョンの状態はどうやって測ればよいですか?
従業員サーベイで「会議で率直に意見を言えるか」「配慮や制度を気兼ねなく使えるか」「自分の意見が意思決定に反映されていると感じるか」といった設問を定点観測する方法が一般的です。属性別に集計すると、特定の層だけスコアが低いといった課題が見えます。
DE&Iの「公平性」と「平等」はどう違いますか?
平等(Equality)は全員に同じ対応をすること、公平(Equity)は一人ひとりの状況に応じて必要な調整をすることです。同じ結果に到達する機会を保障するのが公平性の考え方です。

本記事は一次情報(厚生労働省・経済産業省の公表資料)と当サイトの実務解説にもとづく一般的な情報です。制度の適用は自社の状況により異なります。出典: 厚生労働省「障害者雇用促進法の概要」、経済産業省「ダイバーシティ経営の推進」(いずれも公表資料)。最終更新: 2026年7月。