雇用

精神障害のある社員の定着支援ガイド|定着率データと使える制度・職場の実務

精神障害のある方の就職1年後の定着率は49.3%(障害者職業総合センター2017年調査)。早期離職を防ぐ職場の仕組み、合理的配慮の具体例、ジョブコーチ・就労定着支援など使える外部制度まで、人事の実務を整理します。

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定着支援とは、採用した方が力を発揮して働き続けられるよう、職場の環境・コミュニケーション・体調への配慮を継続的に整える取り組みです。精神障害のある社員の定着は、本人の頑張りではなく職場の仕組みで支えることが基本。データと制度を踏まえた実務を整理します。

この記事のポイント

  • 就職1年後の定着率は精神障害で49.3%と、他の障害種別より低い(2017年調査)
  • 早期離職の多くは配慮の不明確さ・相談先の不在・業務量のミスマッチから
  • 合理的配慮は入社前に合意し、定期面談で見直す
  • ジョブコーチ(3類型)・就労定着支援・なかぽつ等の外部制度を使える
  • 社内だけで抱え込まないことが、本人にも職場にもプラスになる

データで見る定着の現実

障害者職業総合センターの調査(2017年)によると、障害のある方の就職1年後の職場定着率は次のとおりです。

就職1年後の職場定着率(出典: 障害者職業総合センター調査・2017年)
障害種別 1年後定着率
発達障害 71.5%
知的障害 68.0%
身体障害 60.8%
精神障害 49.3%

精神障害のある方は約半数が1年以内に離職しているという数字は、「個人の資質」の問題ではなく、職場側の受け入れ設計に改善余地が大きいことを示しています。逆に言えば、仕組みを整えた職場では定着率を大きく高められるということです(支援機関経由の就職で定着率が高まる傾向も報告されています)。

なぜ早期離職が起きるのか

必要な配慮が曖昧なまま業務が始まる、困ったときの相談先が分からない、業務量が体調の波に合っていない——こうした職場側の設計不足が、早期離職の背景にあることが少なくありません。次のようなサインが見えたら、早めに設計を見直す機会です。

  • 遅刻・欠勤が増える、急な休みが続く
  • 表情や口数の変化、報告・相談が減る
  • ミスが増える、締め切りに間に合わなくなる

これらは本人の努力不足ではなく、環境と業務の調整が必要なサインとして受け止めます(詳しくは不調の早期サインと相談先)。

定着支援の基本サイクル

  1. 入社前 — 本人と配慮事項をすり合わせ、合理的配慮の内容を合意する(支援機関を交えると精度が上がります)
  2. 入社直後(〜3ヶ月) — 週次など高頻度の短い面談で、業務量・分かりにくさ・体調を確認する
  3. 安定期 — 月次面談に移行。配慮は「決めて終わり」にせず定期的に見直す
  4. 変化時 — 業務変更・異動・繁忙期の前に、先回りして調整を相談する

合理的配慮の具体例

  • 通院や服薬の時間を確保できる勤務・休憩の設計
  • 繁忙の偏りを避け、業務量を平準化する
  • 指示を口頭だけでなく文章でも伝える
  • 相談してよい範囲と窓口をあらかじめ決めておく
  • 静かな席・在宅勤務など、集中しやすい環境の選択肢

同じ診断名でも有効な配慮は人により異なります。「診断名から決めつけず、本人と対話して決める」のが原則です(合理的配慮の考え方)。

体調の波を前提に設計する

精神障害のある方の中には、体調に波がある方もいます。「調子が良いときの水準」を基準にすると、波が来たときに本人も職場も苦しくなります。八割程度の負荷を標準とし、調子に応じて上下できる幅を業務設計に組み込むと、長期の安定につながります。不調の初期に無理なく相談できる連絡手段(対面でなくチャットでも可など)を用意しておくことも有効です。

面談で確認したいこと

定期面談は評価の場ではなく、働き方を一緒に調整する場です。

  • 今の業務量は無理のない範囲か(多い/ちょうど/余裕があるか)
  • 困っていること・やりにくいことはないか
  • 配慮の内容は今も合っているか(形骸化していないか)
  • 次の1ヶ月で変わること(業務・体制)の事前共有

採用段階からの定着設計(入口で半分決まる)

定着は入社後の努力だけでなく、採用段階の設計で大きく変わります。

  • 実習から始める — 就労移行支援事業所等と連携した職場実習で、業務との相性を双方が事前に確認できます。
  • トライアル雇用の活用 — 障害者トライアルコース(試行雇用)を使うと、一定期間の試行を経て本採用へ移行できます。精神障害のある方には試行期間を長めに取れる仕組みがあり、助成金の対象にもなり得ます(要件は最新資料をご確認ください)。
  • 三者関係を入社前につくる — 本人・企業・支援機関の三者で顔合わせと役割の確認をしておくと、入社後に困ったときの相談経路が最初から機能します。
  • 業務は「できること」から — 初期は確実にこなせる業務量・内容で成功体験をつくり、段階的に広げます(業務切り出しの設計)。

使える外部支援制度(一覧)

定着支援で活用できる主な外部制度
制度・機関 内容 ポイント
ジョブコーチ(職場適応援助者) 職場に出向き、本人と職場の双方を支援 配置型(地域障害者職業センター)・訪問型(支援法人)・企業在籍型の3類型。支援は数ヶ月単位
就労定着支援(障害福祉サービス) 就労に伴う生活面の課題を支援機関が継続支援 就労移行支援等を経て就職した方が対象。最長3年
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ) 就業と生活の一体的な相談支援 全国に設置。企業からの相談も可能・無料
地域障害者職業センター(JEED) 専門的な職業リハビリテーション ジョブコーチ支援・リワーク支援など。無料

企業在籍型ジョブコーチの養成や、職場適応援助に関する助成金制度もあります(要件・金額は最新の資料をご確認ください)。第三者が入ることで、本人も職場も相談しやすくなるのが外部活用の最大の利点です。

通院・主治医との連携

体調の管理には、通院や主治医の助言が関わることがあります。本人の同意を前提に、勤務時間の配慮や業務量の調整について必要な範囲で情報共有できると、無理のない働き方につながります。共有する範囲は本人と相談して決め、プライバシーに十分配慮します。休職を挟む場合の復職では、主治医の意見に加えて産業医の意見を聴き、段階的に業務量を戻すのが基本です(産業医の活用)。

「数合わせ」でなく戦力化へ

定着支援は、採用した方が持ち味を発揮し、チームの一員として力を発揮するための投資です。定着率のデータが示すとおり、精神障害のある方の定着は仕組みの有無で大きく変わります。法定雇用率の達成を出発点に、定着と戦力化を同時に設計しましょう。採用から受け入れまでの全体像は障害者雇用の進め方 完全ガイド、現場側の準備は受け入れ体制づくりをご覧ください。

よくある質問

精神障害のある社員の定着率はどのくらいですか?
障害者職業総合センターの調査(2017年)では、就職1年後の定着率は49.3%と報告されています。仕組みの整備で改善の余地が大きい数字です。
定着支援で最も大切なことは?
本人の努力に委ねず、合理的配慮の合意・定期面談・体調の波を前提とした業務設計など、職場の仕組みで支えることです。
ジョブコーチと就労定着支援はどう違いますか?
ジョブコーチは職場に出向いて本人と職場の双方を数ヶ月単位で支援する制度、就労定着支援は生活面を含めて最長3年支援する障害福祉サービスです。併用の可否も含め支援機関にご相談ください。
外部の支援は費用がかかりますか?
地域障害者職業センターのジョブコーチ支援や、なかぽつの相談は無料で利用できます。
合理的配慮はいつ決めますか?
入社前に本人とすり合わせて合意し、入社後も定期的に見直すことが望ましいです。
本人が支援機関の利用を望まない場合は?
利用は本人の意思が前提です。まず社内の面談・配慮の調整から始め、選択肢として情報提供を続けるのが現実的です。

出典: 障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」(2017年)、厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業」ほか公表資料(最新版)。本記事は一般的な情報提供であり、個別の診療・法的助言に代わるものではありません。